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ボンジュール、がんです。
 
収穫と仕込みが落ち着いた、と思ったら3週間の一時帰国、バタバタと南仏に
戻ってようやく普段のペースを取り戻したのであぁブログ書かないと、
と思ったら12月も中旬を過ぎていました...
 
もちろんサボっていた訳ではないのですが、これから書く記事に3ヶ月近い時差があるのかと思うと少々焦りを感じてしまいます。
 
焦っても焦らなくてもとりあえずは書くしかない訳で...強引ではありますが、収穫の時期まで3ヶ月ばかり遡りましょう。
 
 
 
昨年もこちらでお話ししたかと思いますが、スーリエでは手摘み収穫ではなく機械で収穫しています。
 
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えっ?! と思われた方々、お気持ちはよく分かります。
機械収穫ってあまり良いイメージがないですもんね。
かくいう自分もそう思っていた一人でしたから。
 
スーリエで研修を始めてこの事実を聞いた時は、本当にここを選んで正解だったのか...? とけっこうな期間悩んだものです。
 
で、去年実際に収穫を迎えてみると、自分が持っていたイメージよりは遥かに良いものでした。
(それだけ自分の持っていたイメージが悪かったんですけどね...)
 
そんなネガティブなイメージを払拭するために、
機械収穫がいかなるものか、つらつら延々と書き綴ることもできるんですが
そんな長々とした論文、書いた本人でも読んでる途中で眠ってしまうんじゃないかと思います...
 
そこで、がんがこれまで持っていたイメージや疑問、または実際に受けた質問などを基にしてざっくばらんなQ&A形式でご説明しようかと思います。
 
もちろん機械収穫を褒めちぎるためでも手摘み収穫をけなすためでもなく、
できるだけ客観的な視点でお互いを比較してみましょう、という狙いです。
 
全てにじっくり目を通していただくのもよし、気になる所だけチェックしていただくのもよしです。
それではいきましょう。
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Q.1
そもそも機械で収穫したブドウって安いテーブルワイン向けだとか、あんまり良いイメージがないんだけど...?
A.
確かにそうですね。
機械での収穫を行っているのは何十、何百ヘクタール単位の畑を所有している
大規模なワイナリーや協同組合にブドウを売るブドウ生産者が大多数です。
 
実際にスーリエでもブドウ栽培家の依頼でその方の収穫を請負うこともしています。
 
ただスーリエを始め、少数ではありますが機械収穫で美味しい、可能な限り
自然な製法でワインを造られている方はいらっしゃいます。
しかもそういった生産者のワインはコストパフォーマンスが非常に高いように感じます。
 
 
Q.2a
機械収穫ってブドウを枝ごと切っちゃうんでしょ?
樹が傷んじゃうし、その後の剪定が大変なんじゃないの?
Q.2b
機械収穫って樹を棒で叩いてブドウを落とすんでしょ?
樹が傷んでしまわないの?
A.
はい、ご説明します。
機械収穫ではブドウを枝ごと切ったり樹を棒で叩いたりはしません。
樹を揺すってブドウの粒だけを落とすんです。
 
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真ん中に通っている白いバトンが振動してぶどうを粒だけ落とします。
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ぶどう粒が落ちた後の茎、綺麗に落としています。
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Q.3
機械収穫だと葉っぱや小枝なんかも一緒くたに収穫しちゃうってイメージがあるんですけど...?
A.
はい、収穫機には葉っぱや枝を取り除く機能も付いているんですが、実際のところそういう収穫もしています。
というのも、ブドウ栽培家が協同組合にブドウを売る際には量り売りになります。
少々の枝や葉っぱが混じっていても協同組合では問題ないので、またそれらを取り除くことで目方が減れば栽培者が損をしてしまうので、こういった場合は葉っぱや枝が混じった状態で収穫します。
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Q.4
手摘み収穫だと摘む時に傷んでいるブドウがあれば取り除けるけど、機械だと
傷んだブドウも関係なく収穫してしまうんでしょ?
A.
そういうイメージをお持ちだと思っていました。
これは収穫機械次第になってしまいますが、中位クラス以上の収穫機に関して言うと、前述の風圧で葉っぱや枝、乾燥してしまったブドウ粒を取り除く機能、それに加えてブドウ粒くらいの大きさのふるいで健全なブドウ粒だけを選り分ける機能が搭載されています。
下の写真を見ていただければこれまで持っていたイメージよりもきちんと選果されていると感じてもらえるかと思います。
 
むしろ手摘み収穫でもヤル気のない収穫者を雇ってしまうとロクに選果もせずに放り込んでくるので、
(実際とある生産者の収穫に参加した時に目撃しました...)
場合によっては機械の方がムラなく一定のレベルで選果してくれるのかもしれません。
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どーです、思っていた以上に綺麗なぶどう達でしょ
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Q.5
機械で収穫するとブドウの粒が潰れて果汁が出るからどんどん酸化していくって聞いたんですけど...?
A.
そうですね、それは有り得ます。
機械収穫において、粒が潰れる原因としてはブドウ樹を揺さぶる強さが強過ぎたり、収穫するブドウが熟し過ぎていたりすると粒が潰れやすくなりますね。
また、収穫したブドウを貯めておくスペースはある程度の深さがあるのでブドウ自体の重さで下の方が潰れてしまったりするのは否めないです。
そのため、収穫直後のブドウに酸化防止剤を添加する生産者もいます。
 
ただ、スーリエに関しては所有している畑が全てカーヴからトラクターで10分圏内の所にあるので収穫したブドウの酸化が始まる前にカーヴに運び入れる事ができていると思います。
 
あと酸化に関して、気温が高ければ高いほど酸化が進みやすくなります。
(カットしたリンゴを常温と冷蔵庫で保存したときの違いですね)
スーリエでは基本的に気温の低い午前中にのみ収穫を行うことで酸化のリスクを抑えています。
 
 
Q.6
じゃあ機械収穫ならではのメリットって何?
A.
色々ありますが、まずはその収穫のスピードでしょうか。
1ha の畑なら1時間かからずに収穫し終えます。手摘みだと10名の収穫者で考えると丸1日かかるでしょうか。
 
そのメリットは大きく2つ。
1つは前述の酸化にも関わりますが、午前中の収穫だけで済ませることができるということ。
収穫の主要時期は9月。7月や8月のような猛烈な暑さは落ち着きますが、
それでも午前10時を回るとどんどん気温が上がり日中は30℃近くの日も
珍しくありません。
機械収穫の場合、朝5時から10時まで収穫するとしても1日で約5ha 収穫できるので、酸化のリスクの高い日中に無理して収穫する必要がなくなります。
 
もう1つはベストのタイミングで収穫できること。
手摘み収穫で収穫者を雇う場合、事前にある程度の時期と期間を決めて募集をかけることになります。
それまでの天候がどうであれその時期、期間内に収穫を終わらせないといけないので少々不本意な状態で収穫してしまう場合もあります。
機械収穫の場合はそこまで事前に時期や期間を決める必要がないので、
今ぶどうがいい状態だから明日収穫しよう、もしくは、3日後雨が降るから明日に収穫してしまおう、といった風に直前でもフレキシブルなスケジュールを立てる事ができる訳です。
 
そしてコスト面でのメリットです。
同じ広さのぶどう畑を収穫した場合、かかる費用は機械収穫だと手摘み収穫の
3分の1程度で収まるそうです。
もちろんワイン一本あたりの値段に大きく影響してくると思います。
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早い時は朝4,5時から収穫を始めることも。
この時期明るくなり始めるのは7時ごろなので手摘み収穫ではできない芸当です。
 
 
Q.7
機械収穫のデメリットを敢えて言うなら?
A.
もちろんベテランの収穫者を揃えて手摘み収穫しているワイナリーには品質面で機械での収穫は及びません。
例えば、がんもお世話になったボージョレのジャン・フォワイヤール。
収穫のスピードが驚くほど速く、摘んだ際の選果も一房一房きっちりと行い、更に集めたブドウを選果する専門のスタッフが厳しくチェックし少しでも熟度が足りていないぶどうは除けられます。
 
他には、少々醸造法が限られるということでしょうか。
機械収穫ではブドウの粒だけを集めるのでブドウを房ごと醸す全房発酵は無理ということになります。
ただ南仏ではほとんどが除梗して醸しているのであまり差し支えはなさそうですが。
 
あとはワイナリーの規模にもよるでしょうか。
最新の収穫機械だとウン千万円という額になるので新しく興したワイナリーや
小規模のワイナリーには初期投資の面でハードルが高いといえますし、
20ha に満たない規模だと収穫機械の原価を償却するためにはかなりの年月が
かかるでしょう。
 
 
Q.8
なるほど、じゃあ機械収穫がベストってこと?
A.
いえいえ、そう軽々しく断言するつもりはありません。
ワイナリーが置かれている環境や規模、設備などによってはベターと言えるかもしれません。
 
機械収穫を行うためにはいくつかの条件をクリアーした畑であること、
もしくは最初から機械収穫を見越した畑設計が必要で、
例えば、畝と畝の間を最低2m以上確保したり、機械が旋回できるスペースを確保したり、剪定においても注意する点がいくつかありますし、傾斜が急過ぎて
機械では収穫できない畑も少なからずあります。
 
また、数ヘクタールしか所有していないワイナリーでは機械で収穫するだけの
メリットは少ないといえるでしょうし。
 
スーリエではもともとある程度の規模のぶどう畑を所有していたこと、
またその畑が機械収穫に向いていたこと、早くから(80年代)機械収穫
を取り入れて試行錯誤してきたこと、などから今のスタイルが確立したのかと思います。
 
 
 
とまあこんな感じで、いかがでしたでしょうか?
 
ざっくり軽く書こうと思っていたのですが、結構なボリュームになってしまいましたね... その分みなさんの抱いている疑問にはお答えできたかと思いますが。
もし他にも疑問質問などあれば別途ご連絡いただければと思います。
 
まだまだ書くことは山盛り残っていますね、これからペースを上げてアップしていきますよ。
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